現場の声からさらなるDX化を推進
医師に1台ずつ貸与したことで、診察情報の共有が進展し、診察の質が向上。
休日の呼び出し回数も減ったことで、医師の働き方改革も実現
ユーザーが代わるたびに行う端末設定の変更や、電話帳の書き換えなどの作業負担を軽減
現場の要望を基盤としながら、病院の全体最適を念頭にさらなる改善を進める
株式会社麻生 飯塚病院(1048床、増本陽秀院長)は DXを経営戦略の一環として位置づけて推進している。スマートフォンの導入・活用もその一つだ。「iPhone」配布を開始し、安全対策や適切なアプリ導入を効率的かつ迅速に進めているが、それを可能にしているのがMDM(モバイル端末管理)サービスだ。安全管理はもとより、用途拡大も病院ぐるみの取り組みとして推進している。
飯塚病院では2017年より、現場レベルでのスマートフォン活用を進めている。きっかけは耐用年数の期限を迎えるPHSがあり、新たな携帯端末への交換が迫られたことが大きいが、将来的な用途拡大を見据えての導入だった。
第一弾では医師約350人に対して1人1台、3病棟で1棟あたり5台を目安に試験的に配布した。当初はあくまでPHSの後継という位置づけだったこともあり、機能も最小限に抑えた。
医師の通話機能と、PHSと同じく耐用年数の迫っていたナースコールの代替機能、そして医師から要望が出ていた患者の画像情報を取り扱う特定診療科での試験的導入と、スマホ機能のごく一部を活用してのスタートだった。
「スマホにかぎらず、新しい取り組みを進める際は、特定の部署でまず試験的に導入し、そこで浮上した課題を解決し、順次広げていく段階を踏むようにしています」と、城野政博・情報システム室室長は語る。
導入による効果はさっそく見られた。医師に1台ずつ貸与したことで、診療情報の共有が進展、診療の質向上はもちろん、医師の働き方改革にも寄与している。
たとえば専門医が夜間や休日など、院内不在の時でも画像を送付して判断を仰げるようになったため、対応のスピードが増したほか、医師の呼び出し回数も減った。先行で導入した泌尿器科では時間外の呼び出し回数が2〜3割減となった。
用途も広がりつつある。
チャットアプリをベンダーと共同で開発し、スマホに搭載、試験的運用を始めた。双方の都合にかかわらず受発信ができるため、結果的に医師の指示を受けての専門職の動きだしが早くなるなどの成果が出ている。「あちこちから『ウチの部門でも早く導入したい』という声があがっています」と、城野室長は手ごたえを語る。
物品管理での活用も始まった。事務部門でスマホのバーコード読み取り機能を生かして従来のPDAの後継機として導入し、発注業務に役立てているほか、薬剤部における薬剤管理への活用にも踏み切っている。
こうしたスマホ活用を支えるのが、アイキューブドシステムズのMDMサービス「CLOMO」だ。導入して使い勝手の良さを実感したという。紛失時のアラート機能や端末内の情報消去の遠隔操作などを行えるほか、端末内の情報更新といった遠隔操作も可能だ。
PHSの場合はユーザーが代わるたびに端末を設定し直す必要があったが、この作業も一掃された。「当院には医師350人が在籍していますが、このうち100人以上が1年間で入れ替わります。その分、電話帳の書き換えなど端末に関する作業も発生するわけで、この負担がなくなるのは大きいです」(総務課・西山純平氏)
対応力も際立っていた。たとえば端末のOSがバージョンアップされればMDMだけでなくシステムのアプリケーションも更新する必要があるが、多くのシステムベンダーはこうした場合、病院側から問い合わせて初めて対応に向けて動きだす。
ところが、西山氏によるとアイキューブドシステムズの場合は同院から連絡する前に「『iPhone』のバージョンアップへの対応が完了した」旨の連絡が届いたという。
スマホ導入を主導しているのは、総務課と情報システム室、今年4月に新設されたDX推進室だ。情報システム室には約30人のシステムエンジニア等が在籍し、自前で電子カルテを構築するほどITの維持・開発力を備える。またDX推進室はトップに経営企画を担う企画管理課の前課長が着任した。同院のIT戦略を重視する姿勢がうかがえる。
もともと同院は、高い品質管理を実践する企業・団体に授与される「デミング賞」を病院として初めて受賞するなど、業務の質の管理・向上や効率化に長年にわたって注力してきた歴史をもち、現場から情報システム室に寄せられるシステム等の依頼は年1800件超に及ぶ。
これらを病院の方針と合致するよう戦略レベルに昇華させたうえで具体化につなげているのだ。
スマホに関しても、現場の声を吸い上げ、電子カルテへの音声入力や患者の摂食状態の把握や分析など、構想は広がるが、倉重貴彰・DX推進室室長は念押しも忘れない。
「ただDXを進めるだけでなく、それによってどのような成果を得るのか。またそれが具体化したのかも見据えて、経営戦略の一環として進めていきます」
現場の要望を基盤としながら、部分最適に陥らず、病院の全体最適を念頭に置いて着実に改善を進める飯塚病院。スマホ活用もそうした指針が踏襲されている。
株式会社麻生 飯塚病院の CLOMO 導入事例は、phase3にも掲載しております。
是非、ご覧ください。
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