近年、サイバー攻撃はますます巧妙化し、従来のセキュリティ対策では対応が追いつかない状況となっています。企業の機密情報漏洩やシステムダウンといった深刻な被害を引き起こす可能性も高まり、セキュリティ対策の強化を急務にお考えの方も多いのではないでしょうか。
このような状況下で注目されているのが、EDR(Endpoint Detection & Response)です。EDRは、企業のエンドポイント(PC、サーバーなど)を常時監視し、不審な挙動を検知することで、サイバー攻撃を早期に発見し、被害を最小限に抑えることを目的としたセキュリティソリューションです。
本記事では、EDRの概念、EPPとの違い、機能、選び方などについて解説します。
はじめに:サイバー脅威が進化する中でのEDRの重要性
高度化・巧妙化の一途を辿っているサイバー攻撃は、企業や組織にとって深刻な脅威となっています。特に従来のセキュリティ対策では検知が難しいゼロデイ攻撃やランサムウェア攻撃が頻発し、被害が拡大しています。
このような状況下で、エンドポイントにおけるセキュリティ対策の重要性がますます高まっています。
近年のサイバー攻撃の高度化と巧妙化
従来のウイルス対策では検知が困難なサイバー攻撃の例として次の3つがあげられます。
標的型攻撃
特定の組織や個人を標的に、その組織の情報を事前に収集し、巧妙に仕掛けてくる高度な攻撃手法です。
ファイルレス攻撃
ファイルを使用せずにメモリ上で直接実行されるため、痕跡が残りにくく、検知が非常に困難です。
サプライチェーン攻撃
取引先などのサプライヤーを介して組織内部に侵入するため、広範囲に影響を与える可能性があります。
EDRが注目される背景と重要性
既知の脅威に特化している従来のセキュリティ対策には限界があり、上記であげたサイバー攻撃や、これから起こり得る未知の脅威や高度な攻撃に対しては十分な対応ができません。そこで登場したのがEDRです。
EDRは、エンドポイントで発生するさまざまなイベントをリアルタイムで監視し、異常な挙動を検知することで、攻撃を早期に発見し、被害拡大を防ぎます。高度化するサイバー攻撃に対抗するために、従来のウイルス対策ソフトと組み合わせることでより強固なセキュリティ体制を構築することができ、企業や組織のセキュリティ対策において不可欠なツールとなりつつあります。
EDRとは何か?
EDRとは、エンドポイントと呼ばれるデバイス(PC、サーバーなど)で発生するさまざまなイベントを継続的に監視し、異常な挙動を検知することで、サイバー攻撃を早期に発見し、対応することを目的としたセキュリティソリューションです。従来のウイルス対策ソフトが、既知の脅威をパターンマッチングで検出することに対し、EDRは未知の脅威も検知できる点が大きな特徴です。
EDRは、エンドポイントから収集したデータをリアルタイムで分析し、異常なプロセス実行、ファイルの変更、ネットワーク通信など、攻撃の兆候を示すイベントを検出します。また、機械学習や人工知能を活用することで、より高度な脅威検知を実現します。
EDRの概念
EDRの概念は、従来のウイルス対策の考え方とは大きく異なります。
従来のウイルス対策が、ウイルスシグネチャと呼ばれるパターンをもとに既知のウイルスを検出するのに対し、EDRは、エンドポイントの挙動を継続的に監視し、異常なパターンを検出することで、未知の脅威にも対応することができます。
エンドポイントとは
エンドポイントとは、ネットワークに接続されたPC、サーバー、スマートフォン、タブレットなど個々のデバイスを指します。エンドポイントは、企業の情報システムにとって重要な資産であり、同時にサイバー攻撃の標的となりやすい存在でもあります。
EDRは、これらのエンドポイントを保護するためのセキュリティソリューションで、エンドポイントで発生するさまざまなイベントを監視することで、サイバー攻撃から企業や組織を守ります。
EDRの目的
EDRの目的は、次の通りです。
<未知の脅威への対応>
従来のウイルス対策ソフトでは検知が難しい未知の脅威に対しても、早期に検知し、対応することで、防御力を高める。
<インシデント対応の迅速化>
攻撃の早期検知により、被害拡大を防止し、インシデント対応の時間を短縮する。
<攻撃の詳細な分析>
攻撃の詳細な痕跡を収集・分析することで、原因究明や今後の対策に役立てる。
<ビジネス継続性の確保>
サイバー攻撃によるビジネスの中断を最小限に抑え、ビジネスの継続性を確保する。
EDRの機能
エンドポイントにおけるセキュリティインシデントを検知し、対応するためのソリューション、EDR。ここではその主な機能について解説します。
<リアルタイム監視>
エンドポイントで発生するさまざまなイベント(ファイルのアクセス、レジストリの変更、ネットワーク通信など)を常時監視します。異常な挙動を検出し、セキュリティ担当者にアラートを送信します。
<脅威の検知>
機械学習や人工知能を活用し、通常の動作から逸脱した異常な行動を検知します。
従来のシグネチャベースの検出に加え、振る舞い分析と呼ばれる、マルウェアの感染によって生じる特徴的な動作パターン(ファイルの暗号化、大量のデータ送信など)も分析し、攻撃を検知します。
<インシデント調査>
攻撃の痕跡を詳細に分析し、侵入経路や被害範囲を特定します。
攻撃を受けた際に攻撃者の行動パターンを把握することで、今後の対策に役立てます。
<自動対応>
脅威が検知された場合、自動的に感染したファイルを隔離したり、ネットワーク接続を遮断したりするなどの対応を行います。
<ログ収集・分析、レポート作成>
エンドポイントで発生した全てのイベントをログとして記録し、集中管理します。ログデータを分析することで、セキュリティ状況を可視化し、潜在的な脅威を事前に発見することができます。作成されたインシデントに関する詳細なレポートを今後の対策に役立てます。
EDRを選ぶ際のポイント
EDRを選ぶ際には、次の点を考慮しましょう。
- 必要な機能が揃っているか
- 予算に合っているか
- サポート体制が充実しているか
- 既存の環境との連携がスムーズに行えるか
環境に合ったEDRを選ぶために、複数のベンダーの製品を比較検討することをおすすめします。
EDRとEPP(Endpoint Protection Platform)の違い
EDRとEPPは、どちらもエンドポイントのセキュリティ対策に貢献するソリューションですが、その機能と目的が異なります。
EPPの概要
EPP(Endpoint Protection Platform)は、エンドポイントをマルウェアやウイルスから保護するためのプラットフォームです。従来のアンチウイルスソフトを進化させたもので、リアルタイムで侵入を検知し、感染を防ぐ機能を備えています。
EPPの主な機能としては、次のようなものがあげられます。
<リアルタイムスキャン>
ファイルやネットワークトラフィックを常時監視し、既知のマルウェアを検出して隔離します。
<シグネチャベースの検知>
ウイルス定義ファイル(シグネチャ)と照合することで、既知のマルウェアを検出します。
<振る舞い検知>
マルウェアの一般的な動作パターンを分析し、未知のマルウェアを検出します。
<侵入防止>
マルウェアや不正なプログラムがエンドポイントに侵入するのを防ぎます。
<パッチ管理>
OSやアプリケーションの脆弱性を解消するためのパッチを自動的に適用します。
EPPは、組織のエンドポイントを保護するための基本的なセキュリティ対策として広く利用されています。
EPPとEDRの比較
EPP | EDR | |
主な機能 | 既知の脅威の防御、リアルタイムスキャン、侵入防止 | 脅威の検出、分析、対応、インシデント調査 |
主な目的 | 既知の脅威からの予防 | 未知の脅威の検出と対応 |
技 術 | シグネチャベースの検出、振る舞い分析 | 機械学習、人工知能、ビッグデータ分析 |
強 み | 既知の脅威に対する高い防御力 | 未知の脅威の検出、インシデント対応の迅速化 |
弱 点 | ゼロデイ攻撃への対応が難しい | 誤検知の可能性がある |
ポイント | 侵入前の防御 | 侵入後の防御 |
EPPは、侵入を防ぐことを主な目的とするのに対し、EDRは、侵入後に検知し、対応することを主な目的としています。EPPが侵入を防ぐための「盾」であるとすれば、EDRは侵入を許してしまった場合に被害を最小限に抑えるための「盾と剣」と言えるでしょう。
両者の連携による効果的なセキュリティ対策
EDRとEPPは、それぞれ異なる強みを持つため、両者を連携させることでより効果的なセキュリティ対策を実現できます。
EPPが既知の脅威からエンドポイントを保護し、EDRが未知の脅威を検出し、インシデントに対応することで、以下のような多層的な防御体制を構築できます。
- EPPが検知できなかった脅威をEDRが検知
- EDRで検知した脅威の情報をEPPにフィードバックし、シグネチャを更新
- 両者のデータを統合して、より高度な脅威分析を行う
EPPとNGAV(Next-Generation Antivirus)の違い
NGAV(Next-Generation Antivirus)は、従来のアンチウイルスソフトの機能を拡張したもので、振る舞い分析やヒューリスティック分析などを取り入れ、より高度な脅威に対応できるようにした次世代のアンチウイルス製品です。
NGAVはアンチウイルスソフトの進化形であるのに対し、EPPはより広範なセキュリティ機能を備えたプラットフォームです。NGAVはマルウェアの検出に特化しているのに対し、EPPはエンドポイント全体のセキュリティを包括的に管理します。
まとめ
EDRは、マルウェア感染後の対応に優れ、企業のセキュリティ体制を強化する有効な手段です。その一方で、あくまで侵入後の対策であるという側面も持ち合わせています。EDRの導入・運用には、専門的な知識とリソースが必要となり、誤検知や対応の遅れといったリスクも伴います。
真のセキュリティ対策は、侵入を未然に防ぐことにあります。まずは、侵入自体を許さないような強固な防御体制を構築することが不可欠です。EDRによる事後対応に加えて、事前防御を強化することで、万全なセキュリティ体制を構築しましょう。
「CLOMO MDM エンドポイントセキュリティ secured by Deep Instinct」
Deep Instinctは、深層学習(ディープラーニング)に基づく、事前防衛型の次世代のアンチウイルスソフトです。予防ファーストのアプローチでマルウェアを高い精度で予測し、未然に防ぐことができます。
未知のウイルスに対しても99%以上の高い検知精度を誇ります。ウイルスパターンファイルの頻繁なアップデートは不要で、日々の管理負担を軽減できます。
また、Deep InstinctはさまざまなOSやモバイルデバイスに対応しており、MDM(モバイルデバイス管理)にも活用されています。CLOMO MDMはDeep Instinctを活用したMDMサービスです。2つを組み合わせることにより、高度なセキュリティ対策ができ、多くの企業やあらゆる業界でご利用いただいています。
Deep Instinct単体での提供も行っており、製品の機能・活用事例のダウンロードや製品についてのお問い合わせから詳細を確認できます。ぜひご活用ください。
CLOMO MDM + Deep Instinct で高次元のセキュリティ対策を実現
CLOMO MDMは、ノートPCやスマートフォン、タブレットなどさまざまなモバイルデバイスを統合的かつ効率的に管理できるMDMサービスです。豊富な機能と充実のサポート体制により14年連続国内MDM市場シェアNo.1*を達成しています。
企業や学校などで所有する、多くのモバイルデバイスを個々に管理することは至難の業です。OSのアップデート管理や各種ソフトウェアのバージョン管理、アンチウイルスソフトの更新管理、使用可能アプリの管理などを一つひとつ手作業で行うためには、大量の人員と時間が必要となります。
CLOMO MDMを使用することで、煩雑になりがちなこれらのモバイルデバイス管理業務の負荷を軽減できます。モバイルデバイスの機能設定や利用状況の把握、各種アプリの配布などを一括で行うことができるため、デバイスごとの設定作業は不要です。また、情報漏洩対策として、遠隔での端末ロックや端末内のデータ削除を行うことができるため、不注意によるデバイスの紛失や盗難の際も安心です。
さらに、CLOMO MDMに加え、Deep Instinctをプラスすることができるサービス「CLOMO MDM エンドポイントセキュリティ secured by Deep Instinct」を活用すれば、さらに強固なセキュリティ対策ができます。CLOMO MDMの管理画面上からDeep Instinctの一括インストールができ、稼働状況やセキュリティアラート、脅威の発生状況の確認が可能です。CLOMO MDMとDeep Instinctの相乗効果で、さらなる高次元のセキュリティ対策が実現できます。
関連記事:Deep Instinctとは?特徴やモバイルデバイス管理における重要性を解説
*出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所「コラボレーション/コンテンツ・モバイル管理パッケージソフトの市場展望」2011〜2013年度出荷金額、「MDM自社ブランド市場(ミックITリポート12月号)」2014~2023年度出荷金額・2024年度出荷金額予測
監修者
粟田 真
CLOMO事業本部 コンサルティングサービス部
2019年にCLOMO事業本部 コンサルティングサービス部に入社。お客様に最適なLCM(ライフサイクルマネジメント)を提案する『プロフェッショナルサービスチーム』の一員として、デバイス導入時のキッティングから運用にかけて、MDMに関するサポートを幅広く行っている。
MCPCシニアモバイルシステムコンサルタント認定資格取得(資格認定番号 : 2200020S0)