iOSデバイスの普及に伴い、企業におけるデバイス管理の重要性がますます高まっています。Appleが提供する「宣言型デバイス管理(DDM)」により、従来のMDMの概念は刷新され、より柔軟かつ効率的なデバイス管理が可能になります。
宣言型デバイス管理の登場により、デバイス管理者は、デバイスの状況をよりリアルタイムに把握し、迅速な対応ができるようになります。
本記事では、宣言型デバイスの概要、メリット・デメリットについて解説します。
Contents
宣言型デバイス管理とは?
![iOSの宣言型デバイス管理(Declarative Device Management)とは?その概要とメリット・デメリット](https://www.i3-systems.com/wp-content/uploads/2025/01/034-2-900x597.jpg)
iOSの「宣言型デバイス管理(Declarative Device Management)」は、Appleが従来の命令型のデバイス管理手法を進化させた新しいアプローチです。従来のコマンド指向モデルに比べて、効率的で柔軟な管理を可能にする仕組みです。
従来のデバイス管理の考え方は、「デバイスのあるべき状態」をMDMサービス利用の管理者が想定したうえで管理パネル等を操作し、個々のデバイスにコマンドを実行するというものでした。いっぽう、宣言型のデバイス管理においては、「デバイスのあるべき状態」をデバイスに伝える(宣言する)だけで、デバイス自身が自主的にその状態になるように動作します。
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Appleは、この宣言型デバイス管理をiOS 15で導入して以降、徐々に機能を進化させてきました。直近のiOS 18では、OSアップデートやアプリのインストールなどの主要機能も宣言型デバイス管理によって行うことができるようになってきています。
また、宣言型デバイス管理の仕組みは、Appleが提供する従来のMDMプロトコルを拡張する形で実装されており、段階導入が可能な設計になっています。
CLOMO MDMでも、現在提供中の一部機能から徐々に宣言型デバイス管理への移行を検討しています。
宣言型デバイス管理のメリット
宣言型デバイス管理には、従来のコマンドベースの管理モデルに比べて、多くのメリットがあります。ここではその主な利点を紹介します。
1. デバイス自身による自己管理
宣言型デバイス管理では、管理ポリシーが「デバイスのあるべき状態」として記述されます。これにより、デバイスは自身の状態を監視し、必要に応じて自律的に設定や構成を更新します。この仕組みにより、管理者が何度も何度もデバイスの状態を確認してコマンドを再実行するような手間を省くことができます。
また、管理者が複数人いる場合には、このデバイスをどういう状態にしたいのかという意思疎通も簡単になります。
2. 状態の同期が簡単
従来のモデルでは、管理者がポリシーの適用状況を確認し、変更が必要なデバイスに手動でコマンドを送る必要がありました。しかし、宣言型モデルでは、デバイスがサーバーから宣言を取得し、現在の状態を自己チェックして適用します。
この仕組みにより、ポリシーの適用漏れや同期ミスが発生しにくくなります。
3. 柔軟性と拡張性
宣言型デバイス管理では、特定の条件を満たすデバイス群にのみ管理ポリシーを適用することも可能です。
たとえば、教師用デバイス、生徒用デバイス、といったデバイスグループ属性を定義し、教師用デバイスには教師用のWi-Fi構成を、生徒用には生徒用Wi-Fi構成を適用するなど、適用デバイスによって柔軟に構成を管理することもできます。
4. 効率的な通信
宣言型デバイス管理では、ステータスチャネルと呼ばれる変化通知がサポートされており、デバイスの状態に変更が生じたときだけデバイスからMDMサーバーへその内容が通知される仕組みがあります。
これにより、従来のように毎日全デバイスにデバイス状態の取得を実行する必要がなくなり、不要な通信を減らすことができます。大規模なデバイス群を管理する際には特に通信負荷が軽減されます。
宣言型デバイス管理のデメリット
新しい仕組みである以上、宣言型デバイス管理にもいくつかの課題や制約があります。以下に主なデメリットをあげます。
1. 初期学習コスト
宣言型デバイス管理は、従来のモデルとは異なる概念に基づいています。そのため、「コマンドを送る」システムではなく「デバイスのあるべき状態」を決めるシステムだというパラダイムシフトをMDM管理者が理解し、新しい知識やスキルを習得することが必要になります。
2. 過渡期の管理負荷
宣言型デバイス管理は、すべての構成管理をサポートしておらず、従来型のコマンドベースの管理モデルと並行して運用する必要が生じます。
例えば、WPA2エンタープライズ(EAP-TLS)を利用して証明書を使いWi-Fi接続を行う構成については、従来のコマンドベースの管理モデルで行う。Safari/Chromeで用いるクライアント証明書認証用の証明書については、宣言型デバイス管理を利用する。といったように、似たようなユースケースでも、2つの仕組みをそれぞれ利用しないといけない場合があります。
3. デバイス側の対応OSが限定的
OSアップデートについてはiOS 17以降、アプリインストールについてはiOS 17.2以降、というように、宣言型デバイス管理は比較的新しいデバイスでのみ利用可能です。
古いOSバージョンのデバイスを管理している環境では、宣言型と従来型のハイブリッド管理が必要になります。
宣言型デバイス管理を導入すべきケース
宣言型デバイス管理は、以下のような環境で特に効果を発揮します。
大量のデバイスを管理している場合:
デバイスが自己管理する仕組みによって、管理者の確認・再実行の手間や、MDMサーバーの負荷を大幅に軽減できます。
動的なポリシー適用が求められる場合:
デバイスグループや状態に応じて柔軟な管理が必要な場合に最適です。
まとめ
宣言型デバイス管理は、Appleが従来のデバイス管理の課題を克服するために導入した次世代のMDMモデルです。デバイス自身が管理ポリシーを解釈し、自律的に状態を維持するという仕組みが効率性と柔軟性を大幅に向上させます。
CLOMO MDMでは、アプリの自動インストール機能やOSアップデート機能など利便性の高い管理機能を提供していますが、アプリやOSが自動的にインストールされなかったケースのリカバリを管理者に委ねてしまっていたという側面もあります。
iOS 17.2からはアプリのインストール機能を宣言型デバイス管理で利用可能になったことで、デバイスが自律的にリカバリをするようになりました。CLOMOサービスご利用の皆さまの負荷軽減もできると考え、当社も検討・開発を進めています。
導入にはMDMに対する概念的なパラダイムシフトを理解し、新しい技術の習得や環境整備が必要になりますが、宣言型デバイス管理のメリットを最大限に活用できるよう、今後もCLOMO MDMは進化してまいります。
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![岩木 祐輔](https://www.i3-systems.com/wp-content/uploads/2025/01/iwaki_portrait.jpg)
監修者
岩木 祐輔
CLOMO事業本部 製品開発部
2019年にCLOMO事業本部の製品開発部に入社。CLOMO PANELの高速化や自動テストの改善など、効率化に対する情熱が強いソフトウェアエンジニア。個人開発でも実験用MDMを作っており、iOSやAndroidのMDMの最新機能を技術情報発信している。